無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ベレクの50mmレンズ
エルマー・ヘクトール・ズマール・ズミタール
・ズマリットを比較する6

オールドライカ50mmレンズの描写について考察します - 2012.08.17


ライツ ズマリット 50mm f1.5
Leitz Summarit 50mm f1.5

 ズマリットはf値にして1.5という大口径のレンズです。ボケ玉と言われていますが、f2を切ると現代のもの以外の多くのレンズはボケ玉の範疇に入るとみなされるかもしれません。当時のライツ社の技術ではこのような大口径レンズを開発することができなかったのでシュナイダー社より36年以降、クセノンというレンズが供給されていました。49年にパテントが切れて以降、ベレクがガラスを新種に変えると共に若干の設計変更をしたものがこのズマリットということになります。ベレクの死後、60年まで製造されていました。ベレクの設計したボケ玉50mmとしては、ヘクトール、ズマールとありますが、これらともまた違いますので、比較しながら見ていきたいと思います。

ズマリット50mmレンズの光学設計図 ズマリット50mmレンズの光学設計図

 さて、深圳に到着後、さらに香港に入って台北にもストップオーバーして帰国しました。深圳市内は特に何もありませんので、香港と台北をこのライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5でご覧いただきます。(注:ズマリットの名を冠したライカのレンズは現行品のシリーズにもあります。ここでご紹介するものは49年に販売されたオールドレンズで現行のものとは違います。)

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 撮影スタジオの看板
 ズマリットの特徴的な写りというと、この写真の焦点より後方に見られる霞がかかったような表現です。これが出るかどうかは光の具合の影響が大きいですが、かなり発生しやすいものですので、これをどのように表現に折り込んでいけるかが1つのポイントになります。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 香港の案内板
 こちらは夜の画像ながら、全体が霞んでいます。写真に写っていない範囲に強力な光源があり、その影響でこのように写っています。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 風邪に薬効のある茶
 f1.5ということで被写界深度が浅く、ボケの効果を活用しやすい面があります。いささかコントラストが低く、ぬるい写りですが、立体感は十分にあります。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 香港の夜の通り
 開放で遠景を写すのは好ましくはありませんが、しかし暗い環境であればシャッタースピードを稼ぐために開けたいところですし、明るいレンズのメリットでもありますから、使っていきたいところです。とはいえ、香港の夜の街はたいへん明るいので絞っても撮影はできないことはありません。そこを強引に開放で撮影するとこのようになり、結構ボケますが、この雰囲気をうまく活用すれば作品に表現を反映させることが可能だろうと思います。ボケが好ましくないケースでは絞れば問題なく、暗い環境なら開けてもボケは目立ちません。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 骨董屋の簾
 かりに焦点が合っていても光の具合によっては滲みが出ることがあります。この例では古いものを扱う店の暖簾ということで、その効果が好ましい方向で表出されています。対象によっては好ましくないこともあるので、絞って消しにかかり、一方で活用したりとさじ加減が求められてきます。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 食堂・竹葉
 屋外の看板ですから、塵を浴びている状況なのは確かですが、この画に見られるフレア気味の状態は看板のコンディションとは無関係です。懐古趣味的な作画です。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 麺の店
 夜になり光量が減少すると不明瞭さも増してきます。これ以上、不明瞭感を深めるようならソフトレンズと間違えられなくはありません。古い祭りの映像のようです。デジタルで撮影した21世紀のものには見えません。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 屋台で親の仕事を見る子供
 対象にかなり接近すると光量がより少なくても明瞭さは増しますが、ベールを纏ったような雰囲気にはなります。ポートレートを撮影すると上品に表現できそうです。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 屋台でジュースを買う子供
 注文したジュースが絞られてくるのを待っている少年です。光源は果物の上にありますので、少年には順光の光が当たっています。こういう光の環境では、面白みのない画になりがちで、コントラストも低いままです。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 台北の夕方に出没するバイクの群れ
 台北では夕方になると仕事を終えた人々によるバイクの群れが出現します。夏ですからまだ比較的明るく、それでも暗がりが迫りつつある時間帯です。焦点は手前の黒ヘルの人物で、背景のビルまではかなり距離があります。このような環境では円周ボケが少し出ます。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 飲み屋の提灯
 開放で撮ればどうしてもフレアは出ますが、提灯を撮影するとあまり目立ちません。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 屋台
 しかし少しピントを外すと滲みが大きくなります。これも雰囲気は良いものです。

ライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5 白いドレスの少女
 少女は動いてはいるものの、f1.5による高速シャッターの効果で比較的鮮明に撮れています。それでもいかんせんレンズ自体がボケ玉ですから、フレアがかかっています。白い衣服が非常に柔らかく写っています。


 これにてベレクの50mmレンズを全部撮りきりました。標準レンズでベストレンズが見つかると安心感がありますので、ライツのレンズ以外からであっても、どれかに決められるなら作品作りに専念しやすいような気がします。フルサイズが使えない環境であれば、35mmや28mmの方が標準になってきますので50mmは関係ないかもしれませんが、オールド50mmレンズの基本と言えるライカのレンズを把握しておけば自身の中でしっかりした基準ができやすいように思います。テッサー型かガウス型のどちらを好むかということも関係ありますが、一般的な基準で選ぶとエルマーが最高でしょう。とにかくこのレンズ程、満足感をもたらしてくれるものはないと思います。とはいえ、その他のレンズも却下しがたいものがあり、作風にマッチすれば有用な絵筆となってくれるに違いありません。

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