無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ベレクの50mmレンズ
エルマー・ヘクトール・ズマール・ズミタール
・ズマリットを比較する4

オールドライカ50mmレンズの描写について考察します - 2012.08.02


ライツ ズマール 50mm f2
Leitz Summar 50mm f2

 次は3番目のズマールです。このレンズは歴代ライカレンズの中で最も評判の悪いもので、安値で買えるレンズの1つです。よく指摘されるトラブルは前玉が柔らかすぎるガラスを採用していることで傷がつきやすいというものです。これはベレクが存命中から言われてきたことで、ベレク自身も失敗だったと認識していたようですが、その一方で非常によく売れたレンズでもありました。製造個数が多いというのも現在安価な理由ですが、それほど売れたということは一定の評価は得ていたことになります。事実、前玉に柔らかい材を使ったことにはそれなりの設計上の理由がある筈ですが、新品の状態だったら良くても古くなってくると曇りが出てきて悪くなってくるから現代では人気がないということかもしれません。

ズマール50mmレンズの光学設計図 ズマール50mmレンズの光学設計図

 私が最初に買ったライカのレンズもズマールでしたが、これも曇りが激しいものでした。ぼやけて画像がはっきりしていませんでした。それで山崎光学を見つけて連絡し、コーティングまでしてもらったものを台湾に持っていて撮影したのが最初でした。モノクロとカラーの両方で撮りましたが、モノの方が良いという印象を持ちました。とはいえカラーも悪くはなく、世の中にこんなに上品に写るレンズがあるのかと思ったものです。そのレンズの現物、ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2がまだありますので、これを三江・侗族自治県に持ち込み撮影いたしました。

 前回の鳳凰古鎮もアクセスのしにくい所でしたが、ここはもっと難しく、旅行の計画には入っていませんでした。しかし拙サイトで使っております Photo-China.Net の初代設立者(?こういうのは何て言うのでしょうか。要するに最初にドメインを取った人です。この方からドメインを頂き、それにも関わらず有効利用できていなかったので無一居を作ったものです。)の方から「桂林市内はつまらないので、滞在しないように」とご助言を受け、しかもメインイベントの「漓江下りをやらないように」という驚くべき助言までも受けたので、これは何かあると思った私はどういうことか説明を求めましたが、話をしっかり聞いてよくよく納得できたので、ここで旅行計画を変更し、その煽りで予定外の三江・程陽古鎮に行くことになったのです。

 鳳凰古鎮も山奥にあるので、ここからバスで3時間、懐化という大きな町に出て一泊し、翌日は柳州へ行く切符をすでに北京で買ってあったのでそれに乗り、三江県駅で途中下車しました。駅前は平屋の民家が少しあるだけのド田舎です。しかしワゴンが数台停まっていて客引しています。怪しいにも構わず、駅から出てきた人たちは皆それに乗ります。私もよくわからないのでそれに乗っかります。すると10分ぐらいで大きな町が見えてきます。三江・古宜鎮です。まずここで宿を取り、翌日に(つまり今日)乗り合いバスで30分程山奥にある程陽古鎮に入域しました。午後には古宜鎮に戻りましたのでその辺のあらましを皆様にもご覧いただきます。

 明日はどうしたらいいのでしょうか。心配ありません。中国は人口が多いので交通機関はふんだんにあります。宿のすぐ近くにはバスターミナルがあってそこから桂林行きのバスが出ていることが判明しましたので、とりあえず切符を購入しますと座席番号は1番でした。流れを引き寄せつつあるのかなという気がして参りました。(というより、そんなに早く切符を買わなくても乗れるから誰も買ってないだけの話。)バスに乗るのは明日ですから、この先は次のページでご覧いただきます。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 三江・古宜鎮の遠景
 まず古宜鎮の遠景からです。そんなに大きな街ではなく、歩いても全体が廻れるぐらいです。古い街ですが歴史的建造物はありません。それでむりやり造っています。歴史的建物を。桂林から3時間という立地なので何とか人を呼び込もうとしているのだろうと思います。ご覧いただいているのは住宅街ですが、なかなか住みやすそうな街です。遠景に霞がかかっていますが、これはズマールで撮るからこのように写るのであって本来はありません。このトーンがモノクロで撮った時にすごく美しいのです。ズマールを使う大きな理由の1つはこれですが、残念ながらカラーでは十分ではありません。これはデジタルですからモノクロにも換えられます。皆さんもこの写真を抜き出してソフトでモノクロに換えることができます。やってみてください。ぜんぜん駄目です。これがつまりライカ社がモノクロ専用機を出す理由だろうと思います。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 台湾・九份の遠景
 同じレンズを15年前に台湾・九份にてライカIIIaで撮影したものです。現在このライカはスクラップ状態です。1939年戦争前夜に作られた粗い作りのものなので直せないようです。モノクロネガに替えただけでズマール特有のモヤがすべて良い方向に作用されます。

 少し脱線してデジタルでのモノクロについて最近の技術の進歩について触れておきます。色にはいろんな色がありますが、これらは「光の三原色」の混ざり合いによって表現できます。それでデジカメのセンサーには赤青緑の取り込む領域があります。しかしセンサーは碁盤の目なので緑を2つにして4つ1組になっています。これをモノクロにすれば理論上4倍の高精度になります。ピクセルをもっと小さくすればもっと高精度になりますが限界はありますし、カラーよりモノクロが4倍になるのは変わりません。これがライカ社がモノクロ専用機を出した理由です。しかしシグマがその上を行っています。Foveon X3ダイレクトイメージセンサー Capture Systemです。これをフルサイズのレンジファインダーで実現するのが難しいからまだライカが採用できないのかもしれません。このリンク先をご覧いただいて新センサーがどのようなものかご覧いただいた後、上へスクロールしますとモノクロ画が見れます。このセンサー内蔵のレンジファインダーカメラはまだ発売されていませんが、このセンサーとズマールを組み合わせられる時はいつか来るかもしれません。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 富士山の洗濯機
 すごいものを見つけました。服務員に殴られそうになりつつ、命がけで撮影したスクープです。「日本の技術 富士山のブランド」とあります。中国人の理屈はわかっています。「今は何でも中国製でしょ?」

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 うどんのような麺
 今までに見たこともないものと言えば、麺もありました。ラーメンでもうどんでもそばでも何でもない、とりあえず麺です。温かいスープに入っています。見た目は特に変わったところはありませんが、分類できるものではありません。私が「これは何?」と聞くと何を勘違いしたか「香港人!よそ者!」と言われ「それはどうでもいいやろ?これちょっと普通じゃないよね」と言ったら「普通の麺!」と言います。当たり前です。麺ですから。それで食べてみました。これはうどんです。てんかすのようなものまで入っています。これが日本に来てうどんに変わったのかもしれないと思いました。中国では既製品の麺はほとんどなく、このような田舎であればなおさらなので、すべて手打ちするしかありません。おいしいのにはそれも理由がありますが、まさか南方でうまい麺にありつけるとは思ってもみませんでした。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 麺の店
 この画像もトーンの出方に注目してみてください。ズマール独特なので、ズマール・トーンと命名してやります。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 程陽古鎮の入り口の橋
 ようやく程陽古鎮に着きますと、まずこの橋を渡ります。町の入り口に架っている古い橋です。かつては交易である程度の富を築いていたものと思われます。ここでもズマール・トーンの出現が見られることに注意して下さい。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 街灯
 古鎮内の通りの様子です。不自然な西洋風街灯が見られます。こういうチグハグが至るところに見られます。最悪なのは古鎮全体に都会の歩道に敷き詰めるタイル石を敷いていることです。保存というものがどういうものか、全くわかっていません。鳳凰と違ってここにはほとんど人が来ていません。当然です。光の具合で強烈なズマール・トーンに見舞われてはいるものの、合焦点の街灯はくっきりと写っています。これもモノクロでなければ魅力は出ません。このレンズは完全にモノクロ向けでしょうね。カラーだと駄目です。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 電車に乗る子供
 これも同じく台湾で同時期に撮影したものですが、対象と前後のボケとの調和が申し分なく、対象もはっきり出ています。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 階段
 もしズマールのトーンをカラーでも活かすなら、せいぜいこれぐらいに収めないといけません。制限を感じます。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 座布団
 このトーンも問題ない範囲です。もし現代レンズに慣れた人がこの画像を見たら、どんなエフェクトを掛けているのかと思うかもしれません。合焦点ははっきりしているのに、それ以外は滲んでいます。座布団があるのは珍しいです。日本に文化が近いことを感じさせます。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 民族衣装
 少数民族の衣装というのは制服のように感じられます。入手可能な材料が限られていたからだろうと思います。輝きがあって様々な色が使える絹が高価だったのはわかるような気がします。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 文字
 侗族(tong-zu)は独特の文字を持っていると言います。しかしどこにも見かけません。これでしょうか。古代の漢字に見えますがそれが侗文字なのかもしれません。ズマールのボケはまるでソフトフォーカスに見えます。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 吹奏楽器を吹く子供
 人が来ると一生懸命に吹き鳴らす子供です。西洋の誕生日の曲、よく知られているものを朗々と吹きます。学校で習った曲で稼ごうという意図が明確なのは明らかです。狙いは明確、しかし違和感があるのです。歓迎いただいて祝っているのはわかるのですが、曲が違うのでは?と思うわけです。子供に言ってもしょうがないので、観光客らは苦笑を禁じえません。本人は真剣です。この後、違和感のないものを見に行きます。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 物売り婆
 観光客は10:30までに広場に集まります。民族の踊りと歌を見るためです。しかしいち早く、物売り婆が出現して観光客らを悩ませます。始まっても売りつけるので邪魔ですが、さすがに誰も怒りません。「要らん」と30回ぐらい言わないといけません。無理やり押し付けます。最悪4人に囲まれます。鳳凰でこういうことをやると公安か係官が来るぐらいのレベルです。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 物売り婆の服
 なかなか良い生地の服を着ているようですが、相当擦り切れています。どういう行為によってこういうところから裂けてくるのかは定かではありません。肘は問題ないようです。昼寝のし過ぎでしょうか。撮影に気がつかれると「買え」と恐喝される恐れがありますので、相当な博打であったことを付け加えておかなければなりません。しかも仲間が他に3人もいるのです。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 踊りの準備をする侗族の人々
 踊りを始める準備です。傘も侗族のもののようですが、日本の傘に似ています。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 侗族の頭飾り
 頭飾りは銀には見えません。かつて豊かだった時代にはこのような宝飾品として財産を残していたのかもしれませんが、やがて売り払い、後に復刻したのかもしれません。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 侗族の踊り
 踊りは女性がメインです。楽器は竹です。開放での撮影ですが、奥へはあまり急激にボケてはおらず、なだらかです。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 ギターのような楽器を使う侗族の人々
 このギターのような楽器は伝来のものではないと思います。やはり保存という観点からは疑問ですが、この公演は非常に内容が良かったです。音楽はよく保存されていますし、聞き応えがあります。これを見るだけでも、この村に行く価値があるかもしれません。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 踊る侗族の人々
 この足を覆う筒のような布は独特です。農作業のためだろうと思います。こういうものも日本古来の文化にあるかもしれません。ズマールの奥へのボケは結構使いやすいような気がします。

ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2 侗族の人々が振る舞う酒
 中間で酒が振る舞われます。この催しは結婚式の再現なのかもしれません。酒は白酒でした。この画は焦点が後ろに来ていて、前がボケています。こうするとソフトフォーカスで撮ったような雰囲気になるので使い方によっては良くなります。一般的には前ボケは汚くて使えないと思いますが、ズマールは活用できます。

戻る  コラム  続き

  無一居Creative Commons License
 Since 2012 空想のレンズを作ってしまう「無一居」 is licensed under a Creative Commons 表示 2.1 日本 License.