無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

マックス・ベレク設計のレンズを整理する

ベレク時代のライカレンズの系譜 - 2012.06.04


マックス・ベレク Max Berekの肖像
 ライカの描写は時代によって変遷があるので、どの角度から見るかによって見解が変わりますが、本来的な意味ではマックス・ベレクが設計したレンズの描写を指します。どんなに時代が進んでもベレクが最初に開発したエルマーの描写から得られる作画の価値は失われることはありません。ベレクの一本目のレンズの開発当初の名称はアナスチグマットからすぐにエルマックスとなり次いでエルマーとなりましたが、最初期のものはレンズの張り合わせが後に生産化されたものに比べて1枚多くなっています。そして最終的に3群4枚構成で落ち着いて量産化された形となり伝統の礎が確立されました。ベレク直筆ノートライカAGにベレク直筆のノートが動画で紹介され、エルマーと正体不明のレンズ、トリプレット2種、ヘクトールに続いてエルマックスの全6本の記載が確認できます。紹介者はライカ光学部長 ペーター・カーブ Peter Karbe氏です。動画を拡大して見ると設計値も参照することができます。

エルマックス50mmとエルマー50mmのレンズ構成比較
エルマックス(左)とエルマー(右)

 現在、エルマックスがどんなレンズだったのか個体数が少ない為、確認することはできませんので、基本的にはエルマーをベレクの最初のレンズと仮定的に考えることができます。エルマー以前のライカレンズについては、例えば最近のオークションでヌルライカが2億円で落札されるなど、これは極端な例ではありますが基本的にこのような傾向で入手困難となっています。このオークションに参加していたという中将姫光学氏によるとエルマックスのその前のアナスチグマット名のレンズも出品されており、これは200万円ぐらいだったようです。(ヴェストリヒトカメラオークション参照)。リンクが切れてはいけませんので、スクリーンショットも以下に貼り付けます。クリックして拡大して下さい。

ヴェストリヒトカメラオークションでのヌルライカの落札価格
 エルマックスもありました。50万円以上というところです。

ヴェストリヒトカメラオークションでのエルマックスの落札価格
 1913~14年頃に3台作られたと言われるウルライカ、そして25年のライカ発売の前にも試作されたとされるヌルライカを経て31年にレンズ交換式に変わるまで継続してこの50mmレンズが取り付けられていました。30年代に入ってからは矢継ぎ早に新しいレンズが発売され(この頃は世界大恐慌の時代なのですが不景気でも高級品は関係ないというのは、どの時代も同じのようです)35年までには28~135mmまでのラインナップが完成していました。さらに35年にはライカ十周年を迎え、記念としてソフトフォーカス専用のタンバールも発売されました。ベレク設計によるレンズのすべては下の年代表でご覧いただけます。(図はクリックしましたら別ページに拡大します。)

ベレク時代のライカレンズマップ
 40年代に入ると、39~45年に第二次世界大戦があった影響、続いて戦後の混乱などの理由が考えられ、新規発売はほとんどなくなっています。49年、ベレクの死の年に発売されたズマロン35mmはようやく販売にこぎ着けることのできた新規開発の唯一のレンズだったようです。ズマレックス85mmも40年代に発売されていますが、設計はすでに36年に完了しプロトタイプも製造されていました。(ズマール90mm f1.5として発見されている。)その後43年に500本ぐらいが作られ、おそらく夜間偵察用として軍に納入されたと思われますがすぐに製造中止となり、48年にようやく一般販売に至りました。

Summar 90mmとSummarex 85mmの比較
上がSummar 90mm、下がSummarex 85mmで設計に若干の修正が加えられている

 他に30年代には活躍しなかったけれど、40年代になって登場した30年代開発のレンズにズミタール50mmもあります。もし戦争がなければさらに新しいレンズを開発していた可能性もあります。f2越えのレンズとしてはシュナイダーから供給されていたクセノンがあり、新しいレンズは、これに匹敵するものだったはずです。実際には、49年にシュナイダーの特許が切れ、ズマリットと名称を変えて販売が継続されましたが、クセノンとズマリットは少し味が違います。クセノンは設計だけシュナイダーの提供だったようですが、味がライツのものではなく明らかにシュナイダーのものです。しかしズマリットはライツ風味に変わっています。もしかするとベレクの最後の50mmレンズに対する回答はズマリットなのかもしれません。ズマリットには新種のガラスを採用したと言われていますので、そうであれば光学部全体の調整が必要ですから、そういうことになるだろうと思います。

 以下に年代表順にベレク設計のレンズを整理します。製造個数(+は表示個数より多い、-は少ない)を示しています。

レンズ
mm/F
群/枚
構成
製造個数
参照
ヘクトール
28/6.3
3/5
ヘリアー
11,255
エルマー
35/3.5
3/4
テッサー
46.747+
ズマロン
35/3.5
4/6
ガウス
122,021-
エルマー
50/3.5
3/4
テッサー
120,514+-
ヘクトール
50/2.5
3/6
ヘクトール
10,600
ズマール
50/2
4/6
ガウス
127,950-
ズミタール
50/2
4/7
ガウス
172,390-
ズマリット
50/1.5
5/7
ガウス
74,643-
ヘクトール
73/1.9
3/6
ヘクトール
7,225
ズマレックス
85/1.5
5/7
ガウス
4,342
エルマー
90/4
3/4
テッサー
107,480-
タンバール
90/2.2
3/4
ヘクトール
3,500-
エルマー
105/6.3
3/4
テッサー
3,975
エルマー
135/4.5
3/4
テッサー
7,000+
ヘクトール
135/4.5
3/4
ヘクトール
108,088-


 以下、ライカレンズのシリアルナンバーを記載します。

シリアルナンバー
製造個数
1931
100000 - 135000
29,576
1932
135001 - 156000
18,394
1933
156001 - 195000
39,384
1934
195001 - 236000
40,948
1935
236001 - 284600
48,234
1936
284601 - 345000
60,384
1937
345001 - 416500
71,495
1938
416501 - 490000
74,011
1939
490001 - 538500
48,474
1940
538501 - 565000
26,384
1941
565001 - 582294
17,264
1942
582295 - 593000
10,383
1943
593001 - 594880
1,884
1944
594881 - 595000
128
1945
595001 - 601000
5,953
1946
601001 - 633000
32,283
1947
633001 - 647000
13,957
1948
647001 - 682000
34,864
1949
682001 - 756000
74,032
1950
756001 - 840000
84,281
1951
840001 - 950000
111,193
1952
950001 - 1051000
100,982
1953
1051000 - 1124000
72,927
1954
1124001 - 1236000
111,938
1955
1236001 - 1333000
97,022
1956
1333001 - 1459000
125,594
1957
1459001 - 1548000
89,389
1958
1548001 - 1645300
97,284
1959
1645301 - 1717000
71,721
1960
1717001 - 1827000
110,191
1961
1827001 - 1913000
86,684
1962
1913001 - 1967100
54,102
1963
1967101 - 2015700
48,543
1964
2015701 - 2077500
61,182
1965
2077501 - 2156300
78,873
1966
2156301 - 2236500
80,293
1967
2236501 - 2254400
17,989
1968
2254401 - 2312750
58,733
1969
2312751 - 2384700
71,997
1970
2384701 - 2468500
83,837
1971
2468501 - 2503100
34,658
1972
2503101 - 2556500
53,983
1973
2556501 - 2663400
107,192
1974
2663401 - 2731900
68,574
1975
2731901 - 2761100
29,203
1976
2761101 - 2809400
48,382
1977
2809401 - 2880600
71,182
1978
2880601 - 2967250
86,865
1979
2967251 - 3013650
46,756
1980
3013651 - 3087000
73,734
1981
3087001 - 3160500
73,744
1982
3160501 - 3249100
88,743
1983
3249101 - 3294900
45,857
1984
3294901 - 3346200
51,289
1985
3346201 - 3383200
36,985
1986
3383201 - 3422890
39,983
1987
3422891 - 3455870
32,908
1988
3455871 - 3478900
23,083
1989
3478901 - 3503150
24,394
1990
3503151 - 3540467
37,737
1991
3540468 - 3583830
43,383
1992
3585831 - 3610680
26,848
1993
3610381 - 3644475
33,873
1994
3644476 - 3677030
32,272
1995
3677031 - 3730290
53,250
1996
3730291 - 3770920
40,584
1997
3770930 - 3818624
47,765
1998
3818625 - 3857849
39,874
1999
3857850 - 3882996
25,458
2000
3882997 - 3912247
29,250
2001
3912248 - 3941497
28,895
2002
3941498 - 3970748
27,853
2003
3970748 - 3999999
22,192
2004
4000000 - 4010600
9,843
2005
4010601 - 4025900
16,964
2006
4025901 - 4034900
11,192
2007
4034901 - 4057000
22,922
2008
4057001 - 4080000
28,828
2009
4080001 - 4100000
11,483
2010
4100001 - 4115000
17,943
2011
4115001 - 4130000
11,937
2012
4130001 -

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