無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

絵画のような描写のレンズ1

中国の水彩画と英国の油彩画 - 2012.07.01


上海 50mm f3.5
Shanghai 50mm f3.5

 中国でかつて作られていたライカ・コピーに「上海58-II」というのがあります。バルナックライカのコピーには多くの場合、エルマー50mm f3.5のコピーも付けられます。中国コピーも例外ではなく、外観もエルマーにそっくりな「上海」というレンズが付けられていました。中国のライカコピーには他に「紅旗」というのもあります。こちらはたいへんレアで入手は非常に困難です。M型をコピーしておりズミクロンのコピーが付いているようです。上海58-IIも最近はかなり価格が上がってきています。

 とはいえ、上海58-IIはコレクターでもなければ要らないと思います。しかしレンズの方は気になります。ある時、中国のオークションを見ていましたら上海のレンズのみというのが安値で出品されていましたので早速入手してみました。(中国のオークションはほとんど即決なのでオークション形式になっていません。簡易ショッピングモールと言った方がいいかもしれません)レンズだけというと、要するにボディから外されたレンズということになりますので、後玉の状態が気になります。やはりかなりひどかったので、山崎光学に相談しましたが「玉が1.5cm以内だから研磨できない」ということで妥協せざるを得ませんでした。それでも前玉は研磨できたので、かなり状態は改善された上、バックフォーカスも調整していただいてR-D1にしっかり使えるようになりました。(注:上海はライカで使うと無限が出ませんので注意が必要です。)

 上海 50mm f3.5は一般に、水墨画のような写りと形容されています。要するにガラスの質が悪いということではないのかなと思いますがよくわかりません。その一方であのような滲みを獲得しようと思えば簡単にできるものでもありません。まだシャープなレンズを作る方が分かり易くて簡単だろうと思います。それゆえ、狙う表現によっては貴重?なレンズと言えなくもありません。そこでしっかり使いこなし方を考えてから撮影してみたいと思います。

上海 Shanghai 50mm f3.5 积水潭
 中国の水彩画と言えば、山水画です。山や川を描きます。北京市内は全体が平地で山なんてありません。川はありますが人工の堀です。しょうがないので自宅近くの旧北京城の堀をまずは撮ってみます。まるでソフトフィルターを使ったような画像です。コーティングが入ってはいますが、逆光には非常に弱いようです。取り扱いには、かなりの困難が予想されるということがわかったところで、スタートです。

上海 Shanghai 50mm f3.5 琵琶老師
 积水潭から南に下りますと新街口に入ります。知り合いの韓軍の楽器店へ行きます。店員兼琵琶老師の小姐が琵琶の練習をしています。レンズがソフトっぽい描写なのですから、これを逃す手はありません。早速撮ってみますと柔らかい独特の描写です。エルマーに似ているのは外観とレンズ構成だけのようです。全くの別物という感じがいたします。尚、撮影は危険を伴う作業で、こういうこともやってきますので注意が必要です。

上海 Shanghai 50mm f3.5 衣服
 服の質感の出方が良さそうということで標的を物色しつつ、新街口の南にある護国寺小吃街に進入します。すぐさまターゲットを発見し、光の廻り具合に注意を払いつつ1枚押さえます。なかなか良い感じです。水墨画のようと言われるとこの被写体ではどうかなとは思いますが、髪を見ると確かにそういう雰囲気はあります。

上海 Shanghai 50mm f3.5 寝るお爺さん
 柔らかい描写というのは皴を目立たなくします。そこで老人に狙いを定めて小吃街を進みます。ターゲットが脇をゆっくりと通り過ぎたので、早歩きで追いすがりつつ1枚撮ります。水墨画というと仙人と思っていたので、塩梅としてはちょうど良い感じです。仙人はこの後、目を醒ましましたので、タイミングとしてはギリギリというところでした。

上海 Shanghai 50mm f3.5 護国寺小吃街の飾り
 護国寺小吃街は北京有数の有名な食堂街です。街の保全に力を入れており、古い景観が保たれています。北京の風俗画があちこちに貼ってあって趣があります。撮ってみますと絵画らしい雰囲気が引き立ちます。背景のボケ具合も独特の雰囲気があります。

上海 Shanghai 50mm f3.5 古い屋敷を改装したホテル
上海 Shanghai 50mm f3.5 レストランの照明
上海 Shanghai 50mm f3.5 和風のランプ
 夜の光を撮るとどんな感じか、积水潭の北側にある小西天へ行ってみます。毎晩、西直門方面に至るまでの広い範囲で賑わっています。祭りのようにとても明るく、人工光の宝庫と言っていいぐらいです。いろんな照明がありますので撮ってみますと、東洋的な雰囲気を捉えることができました。

上海 Shanghai 50mm f3.5 加工済み食品の店
 上海はボケの激しいレンズではありますが、それにしてもこの画はボケ過ぎではないかと思えます。光が強いとボケが強くなります。これほどであれば、写真にすら見えないこともありますが、写真と思わなければ悪くはありません。

上海 Shanghai 50mm f3.5 美容院
上海 Shanghai 50mm f3.5 茶芸館
 様々な照明が複雑に絡み合うこのような環境ではシャープな繊細さと消えていきそうなボケが同居し、確かに「水彩画のよう」と言われるのも納得できます。

上海 Shanghai 50mm f3.5 海林天酒
上海 Shanghai 50mm f3.5 東北郷村人家
 特定の照明が強くなって支配的になるとボケが増します。強い光は天然、人工に関わりなく、周囲を損ないます。この味わいがこのレンズの持ち味のようです。

上海 Shanghai 50mm f3.5 狛犬
上海 Shanghai 50mm f3.5 雑誌売り
 もっと近い対象を撮ってみます。やはり強い光を受けると簡単に潰されています。しかしそうでない部分は割とシャープに写ります。もしポートレートでこのレンズを使うのであれば、照明の強さによって画を操作しやすそうです。

上海 Shanghai 50mm f3.5 ホラー映画の広告
 ホラー映画の広告です。実物より怖く写るかと思いきや、そんなこともありませんでした。昔の古い広告に見えてしまいます。

上海 Shanghai 50mm f3.5 静物
 "絵画的"ということですから静物は撮らないといけません。光の強弱によるボケ具合の変化も確認できます。

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