無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ヘクトール28,50,73,135mmを比較する5

オールドライカ・ヘクトールレンズの描写について考察します - 2012.07.15


ライツ ヘクトール 73mm f1.9
Leitz Hektor 73mm f1.9

 最後にライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9を見て終わります。場所は異民族の集大成的なところをチョイスしたいと思います。オリンピック・スタジアムの南にあります「中華民族園」です。中国は少数民族の多い国です。"少数"といっても漢族と比較した場合であって、人口が多い民族は単一のみでも数千万人に達します。国の中に幾つもの国があるような雰囲気ですが、園内はその一つ一つを「景区」という区分けで特徴が再現されています。それを順番にみていきますが、メインの活動はそれではなく、月極めで開催されている催し物を見ることです。今月は傣族(タイ族)の「サラカの祝福」という踊りとその他諸々を経て、水掛け祭りで終了というプログラムでした。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 民族衣装を着た子供
 まずは特に際立った特徴のない画です。光が理想的であれば何ら問題なく写ります。ただヘクトール73mmは鮮明さには欠けます。このレンズで"普通"に撮るということが結構難しく、それには光の影響が大きいので、このレンズ程「光を味方につける」重要性を感じさせるものはないと言ってもよい程です。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 携帯を見る2人の女性
 かといって「光を敵に回した」画というのも何とも判別し難く、この写真では外から差し込む強い光の影響でソフトフォーカスがかかったようになっています。レンズの位置は室内ですから暗いのですが、それでも大きな影響が出ています。屋外で逆光はかなりやられます。とはいえ、焼きで何とかなるので深刻な問題という程ではないようにも思いますが、苦しいのは間違い有りません。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 傘と民族衣装の女性
 これは先程と反対の方角から撮ったもので順光になりますが、太陽は建物で遮られています。背景が非常に明るいので暗いシルエットのようになっています。輝く背景は少々うるさい感じがあります。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 踊り子
 柔らかい光が得られた時が一番ライカレンズとしての良さが出るような気がします。繊細なトーンは申し分ありません。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 タイ族の遊び
 動きのある対象をあまり明るくない環境で撮影するのは意図のわかりにくい画にしてしまいます。この作例だったら竹棒で遊んでいるというのがすぐにわかりますので、むしろこのように動きを捉える方が理に適っていますが、いつもそうだと限りません。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 民族衣装を着た姉と妹
 例えば、ピントを後ろに逸らせた画というのは、こういう感じになりますが、前か後ろかはレンズによります。エルマー90mmだったら前がいいかもしれませんが、ヘクトール73mmの後ろボケは基本的に汚いので、後ピンに置くのが一般的だろうと思います。少女は虫に噛まれたようで、写真を見るとおとなしそうですが、実際には動きが激しい状況だったので、これに対してピントを合わせると汚くなります。意味がわかりくい画にもなります。このようにピンを逸らせると観賞可能な画になりやすいことがあります。ヘクトール73mmの前ボケが美しいから可能な画です。光は常に読まないといけませんから難しいところです。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 民族織
ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 池とボート
 ヘクトール73mmにとって理想的な光とは何なのでしょうか。それはおそらく「真横の光」です。レンズが太陽に対して90°になる角度です。その場合、かなり理想的なトーンが得られます。画像に絵画のような美をもたらしたい場合、太陽との位置関係はおそらく多くの状況でこうなる筈です。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 旗
 光の最も理想的な状態が相応しい作画意図に適っているかは別の問題です。また、常に"欲しい光"が得られるとも限りません。それゆえ、特にヘクトール73mmのようなレンズを使う場合は様々な光を読み切ろうとする努力が必要になってきます。この作例は室内にある程度の自由なスペースがあります。そういう状況を有意義に使えば、どの位置がベストなのか回答を探すことが可能な場合があります。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 柱と影
 肉眼での光の観察はそんなに難しくはありません。とはいえ、広角レンズであれば幅広く撮ってしまいますので難しくなってくる傾向はあります。様々な光が画角内に含まれ自由度を失ってしまうということもあります。73mmであれば、画角が狭いのでそれほど難しくはなりません。この作例に見られる光は肉眼でも見えますし、ライカのレンズがこれらをあますところなく捉えることが可能なのはわかっているので躊躇うことなく撮影できます。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 階段
 太陽の光が上から射していますので肉眼でも見るにも苦しい状況です。ただ瓦には直接は光が当たっていません。それで可能だった一枚です。うまくフレアで浮かんだようになりました。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 渓谷と橋
 渓谷とその向こうに見える橋です。光が弱かったのでうまくトーンが活かせ、幻想的な画が得られました。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 73mm f1.9 蓮
 後ろボケは美しくはありません。扱いはとても難しいところです。できる限り複雑でない背景を選択したいところです。


 ここまでで代表的なヘクトールレンズを見てきましたが、いずれも全く個性が違います。ズームレンズを使って画角を変えるように複数のヘクトールレンズを交換して撮影していくとミスマッチが発生します。セットになりうる一連のシリーズと考えない方が良さそうです。セットと見なせるのはエルマーでしょう。とはいえ、ヘクトール系は単体で見れば十分に個性豊かで使えるレンズばかりです。優等生と不良が混在している模様ですが、いずれもうまく力を発揮させると代わりのレンズが見つかり難いと思えてきます。

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