無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ヘクトール28,50,73,135mmを比較する2

オールドライカ・ヘクトールレンズの描写について考察します - 2012.07.03


ライツ ヘクトール 50mm f2.5
Leitz Hektor 50mm f2.5

 それではまずライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5の作例から見ていきたいと思います。このレンズについてまず私見からですが、かなり使いにくいレンズという感じがします。使いにくかったら使わなければいいのですが、こんなに表現から厳粛さが感じられるレンズはなかなかありません。鉛のように写るレンズです。素質を活かすためにどう扱ったらいいのか、いまだに回答が見つからないながらも気になってしまい、だらだらと使っている次第です。R-D1で撮ると65mm相当になるからというのは関係なく、他の50mmは撮りにくいとは思わないし、M3を使っていた時から扱いに頭を痛めていたのです。そういう未解決の状況のまま撮影に及んだ例をご覧いただきます。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 饅頭屋で並んでいる人々
 50mmは北京の回族の居住区・牛街を撮影していくことにします。(回族はイスラムの少数民族で、中国では回族という表現は蔑称になるので「回民」と呼びます。詳しい理由は知りません。複雑な歴史的背景があるものと思います。ここでは日本人にわかりやすいように「回族」としておきます。)饅頭屋のようなところで人が並んでいます。北京人は並びませんので、このように立ちます。皆顔見知りなので問題ないようです。他者との間合いに自由な発想が求められます。真後ろに立つと違和感があります。淡いパステル調の発色が柔らかさを演出しています。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 牛街10番地
 光の当たったところの質感がぬるいですが、硬質な感じはいかにもヘクトールです。ガラスの組み合わせによってこういう表現になるのかもしれません。「牛」というのは牛という意味はもちろんありますが、中国語では強いという意味もあります。顧客に商品を勧める時に「最牛」などと言います。「最強(最良)」という意味です。「牛街」は「強い街・凄い街」という意味が想定されます。でも怖いところではありません。普通の住宅街です。そもそも「牛」にはマイナスのイメージはないようです。ここはイスラム圏の方々の居住区なので、意味はまた違うと思います。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 シャンデリア
 こういう画は枚数の少ないエルマーあたりであれば、もっとくっきりと出ます。何かが纏わりついた感じで写っています。このシャンデリアは中国風でも西洋風でもありません。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 門柱
 纏わりつくと言えば、これもそうです。かなり近距離での撮影ですが、ふわっと浮かび上がっています。まるでちょっとソフト気味のポートレートレンズのようです。ベレクはこの効果を確認した上で73mmを着想したのかもしれません。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 回族の物ごい
ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 母と子供
 そこで今度は人物を撮ってみます。なかなか良い感じです。このレンズは、ポートレート用に作ったわけではないのは間違いないようですが、結果的にそんな感じの効果になっています。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 金属の蒸篭
ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 拉皮
ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 社区の入り口
 人だけでなく、物体も狙ってみます。ごちゃごちゃとしたものよりシンプルな対象を狙った方が良さそうです。画の中でメインとなる主役を作りたがる傾向があるように思います。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 肉餅屋
 今度も対象を絞って再び人物ですが、周囲に埋もれている例です。年配のご夫人が何かの食品を作っています。あまり引き立つ感じではありません。記録写真のようですが写りも眠いので記録とするにも至っていません。やはり明確な主題を設けるべきだろうと思います。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 清真・正統
 平たいものはどうでしょうか? こういう画は苦手のようです。ただ発色にはノンコートレンズならではの味わいがあります。「清真」というのは、コーランの教えに従って清いものを提供しているという意味です。アラブ人は砂漠の民だったので衛生に厳しいのです。アラブの文化が漢字と混じっているところに独特のものがあります。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 読書
 この人々は何なのでしょうか? シュールな画です。読書好きが一堂に会したようにも見え、一方で互いに何の関心もいだいていないようにも見えます。そして思索を巡らす少女と青シャツの男、無造作に吊り下げられた洗濯は何を意味するのでしょうか? 使っているうちにレンズの絞りが3.2ぐらいまでズレてきていたので、この後に2.5に戻したのですが、この画に関しては偶然にちょうど良かったようです。奥行き感は上手に使う価値がありそうです。

ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 菜市場
ライツ Leitz ヘクトール Hektor 50mm f2.5 東来順
 中景と遠景です。あまりそれほど魅力的な写り方はしません。ポートレートか静物撮影用に使うならポテンシャルを発揮しそうです。このあたりがスナップで使い難い理由なのかもしれません。対象を引きつけた時に能力を発揮するようです。ただそれは開放で撮るからであって、適宜絞るなど融通を利かせれば、しっかりどんな状況でも使えるはずです。距離に応じて絞っていくのが良さそうです。

戻る  コラム  続き

無一居Creative Commons License
 Since 2012 空想のレンズを作ってしまう「無一居」 is licensed under a Creative Commons 表示 2.1 日本 License.