無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ヴィンテージレンズの画角についての論考

焦点距離の選択について - 2012.07.10


 今日ではズームレンズというものがもてはやされており、世間のほとんどの人もコンパクトカメラのズーム機能を使いこなすか、そうでなくても超広角レンズの付いた携帯で撮影しますので、焦点距離に対する概念はだいたいの理解で問題ありません。しかし古いレンズを使うことを選択したら、そういうわけにはいきません。「標準は35~80mmズーム」とか言っていたところに、単体35,50mm、或いは28mmにする選択肢から選ばなければならなくなり、レンズは一度に1つしか付けられませんから、どれか1つに絞らないといけません。このあたりは個人の好みがありますので、他の人に聞いてもわかりません。とはいえ、昔は標準レンズというものが何かはっきり決まっていました。

焦点距離の違いを示す図
 上の古い図をご覧いただきますと、左にフィルムのような図があります。これは一般的によく知られている35mm判のフィルムと同じものです。写真はこのフィルムを横に使いますので、一つの写真はもっと大きくなりますが、映画は縦に使いますから、図のような感じになり、写真の1コマが映画の2コマ分ぐらいになります。16mmという規格です。右にレンズが全部で6本あります。下から2つ目が「1"」と表記されていますが、これは1インチという意味で写真界では25mmと決まっています。16mm映画ではこれを以て標準レンズとしていました。望遠レンズは基本的に1インチずつ足していく形で作られていました。

 こういう経緯から同じフィルムを使う取り決めでライカが作られた時に50mmが標準レンズに決まりました。16mm映画よりも倍のフィルム面を使うので、標準レンズの焦点距離も倍にすれば、同じ画角で写るからです。しかしここでライカの標準レンズを「2インチ」としなかったのは意味深長です。おそらくこの時に、ライカの望遠レンズを3,4,5,6インチという具合に作るつもりがなかったのだろうと思います。事実、90mmとか135mmというものが作られていきました。これをインチ表記するのはいささか複雑だがらです。

 ライカの望遠レンズ、そして広角レンズについて、そしてその構成ラインナップについては、マックス・ベレク設計のレンズを整理するにありますが、この焦点距離の布石は後々までスタンダードとされました。唯一異なるのは、90mmが変更され、多くのメーカーで採用されたのは85mmになったことぐらいでした。

 ここで映画用に戻ってみてみます。インチ表記をやめてmmに換算しますと標準は25mm、そして50,75,100,150mmとこのように並んでいます。これら映画用のレンズのマウントを改造するなりして35mm判のカメラで使いますと標準としては50mmを選択することになります。望遠は75,100mmというような感じになります。25mmは広角になります。しかし元々小さなフィルムサイズのためのレンズですから、暗角は出やすくなります。標準、望遠は暗角が出にくいので好んで改造して使われています。これら映画用のレンズの中から2~4インチあたりのものを探して使ってみると一般の写真用のレンズとは違った描写を楽しむことができます。

 最近出ているデジカメの多くはフルサイズフォーマットではないので、標準レンズが50mmとは限りません。一部は使用できるカメラ一覧でご覧、確認いただけます。いずれにしても、古いレンズを愛好する時には「標準レンズが何mm?」というところから入らないといけません。普通はまず標準レンズ1本を付けて始めます。他の選択肢としては、標準よりもう少し広い画角が欲しいという場合ですが、この決定に至る前に標準を使っていたという経験は必要です。それでも標準レンズを使い続けるのが一番ベストという判断になる場合が多いと思います。

 現代のレンズはほとんど例外なく優秀なので、お手持ちのカメラに純正レンズがあるならそれ、或いはサードパーティのレンズでも性能に対して何の問題もない筈です。ですから、それにも関わらず古いレンズを探すというのは、その時点で特殊ということになります。しかも古いレンズは高価な場合が多いので、そういうものをわざわざ探して買うというのは理解し難いと考える人は多くいます。そう思われる方々は現代レンズを評価できるということなので、それは幸せなことです。幸せになれない人が古いレンズを探します。それらの人々はガラスの塊に人間味(「欠点」とも見なされることがある)を訴求します。味わいがあれば何でも良いわけではないので、個人によって好みも違いますし難しいところです。

 しかし一般にどんなメーカーのものでもはっきり言える事実としては「50mmに達しない焦点距離のレンズは味わいがないことが多い」ということです。実際には古い広角レンズには癖が強いものが多いのですが、素晴らしい描写と思えるものはだいたい50mm以上であるとされています。現代のデジタルカメラで広角を使うのは暗角が出やすいという事情はありますが、もし暗角が出ても50mmの範囲にトリミングすれば、50mmレンズと同じことになりますし安く買えるならその方が良いかもしれません。しかしこれが同じにならないのです。50mmレンズの描写には勝てません。これが中古市場で50mmに達した途端に価格が急騰するレンズが多い理由です。75mmになるとさらに一段上がる銘柄もあります。

 この事実は多くのオールドレンズマニアがフルサイズセンサーに拘る最大の理由です。センサーがフルサイズなら50mmレンズは標準レンズとして使用できますが、センサーが小さいなら望遠になってしまいます。現代レンズを使うならセンサーが小さくても構わないかもしれませんが、古いレンズを使うなら大きなセンサーを求めることは切実な問題なのです。オールドレンズを愛好するならフランジバックの長い一眼レフは使いづらく、適当なカメラを探すとどうしてもミラーレスになります。この中で普及価格帯のものとなるとフルサイズに対して焦点距離が1.5倍になるものです。50mmレンズは75mmになるので、スナップは苦しくなります。かといってフルサイズを求めるなら本稿の時点では高価なライカしかありません。

 もしこのような問題がなければ、多くの人はオールドレンズの素晴らしさに気がつくでしょう。そうなるとオールドレンズはさらに高額になるという別の問題が発生するのでしょうか。私が思うに恐らく現行のメーカーが設計方針を変更するので、壊れていたり改造が必要だったりする古いレンズはやはり主要な選択肢にならないと思います。メーカーは売れるとわかるとオールドレンズの個性を取り入れ始めると思うからです。

 それでこれからオールドレンズを使ってみようという方は、重要なポイントを踏まえておく必要があります。50mm以下でも良いものはありますが、はっきりわからなければ50mmにこだわるということです。センサーは可能な限り大きいものを選ぶということです。わかった上で50mm以下に手を出すのは構いませんが、まず一本目としては相応しくはないと思います。

 女性の方が写真をやる時は男性とは違い、すでに撮影するものが決まっていると言われます。ブログに投稿する写真、例えば、料理、育てている植物、ペット、子供などです。これらを撮影するために使うレンズは、現行のレンズラインナップから選ぶのであれば選択肢はいろいろあるかもしれません。しかしここにオールドレンズを含めるなら、とりあえず50mm以下は避ける方向ですし、ズームも避けるか無いので、ミラーレスに50,75mmあたりを付けることになります。そうであれば、1.5倍のセンサーに50mmを75mm換算で使うことになり、もはやこれぐらいしか選択肢がありません。しかしレンズの種類は現行と比較にならない程多いので、そういう意味では選択肢は大きく広がります。

 レンズの構成は描写に大きな影響があるので、オールドレンズ愛好家はレンズ構成に注意を向けます。種類が豊富なのは50mmです。豊富であれば良いということは必ずしもないですが、試された例が50mmに多いということは50mmがレンズ設計の上で無理がない理想的な環境ということも言え、実際50~100mmあたりのレンズに素晴らしいものが多く見受けられます。レンズ構成毎の個性の違いを理解することは必須のたしなみです。

 写真機はハッセルブラッドなどの例外を除いて長方形に画像を写し取ります。それでカメラを立ててフィルム(或いはセンサー)を縦に使って撮影することも出来ます。この時、腕の状態が不安定になってブレやすくなります。ライカのようなレンジファインダーで撮影する場合は普通、一眼レフとは逆に持ちます。

縦の撮影方法。一般的な向き
 このようにシャッターボタンを下にして右手でしっかり握り、脇を絞めます。一眼レフは逆で、上にシャッターボタンが来ます。いずれの場合も下に来る方でホールドします。ライカは小さいので握るようにボタンを押します。

縦の撮影方法。左利きの場合
 左利きの場合は逆に握ることを好む人がいますが、いずれにしてもボタンは右手で押します。そしてこの場合もライカをしっかり握る必要があって、下の腕はしっかり脇を締めます。手のひらでライカを覆うように撮影します。通常の撮影の向きでは両脇を絞めますので安定しますが、縦の場合は不安定なのでより力を込める必要があります。

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